ネコはとても室内飼育に適した動物です。もともと待ち伏せ型のハンターで、比較的狭い縄張りを持つため、イヌの仲間のように疾走して獲物を追ったり、広い縄張りを探索するような習性がなく、人間の居住空間で無理なく生活することができるからです。
しかし、人間との付き合いが1万年にも及ぶといっても、まだまだ、野生動物としての本能は生きていますから、飼い主とネコがある程度折り合いをつけなければならないこともあります。
室内ネコの困った習性が雄のマーキング。自分の縄張りを保持するため、高い位置にまでオシッコを跳ね上げたり、縄張り内の目新しいものにオシッコをかけたりする習性です。ネコは本来縄張り内の決まった場所に排泄する習性があるので、トイレを覚えさせることができますが、成熟した雄は縄張りのあちこちに排泄してしまうのです。
マーキングは成熟した雄の習性なので、子猫のときに去勢した個体はマーキングをしませんが、一度マーキングを覚えてしまった成ネコは、マーキングが習性になるため、去勢の時期が遅くなるほど止める確率は低くなります。
繁殖期は雌も普段より排泄の回数が増えるため、トイレを汚しやすくなり、粗相することもあります。この場合も発情にともなう生理的現象ですから、避妊手術を受けさせることで防ぐことができます。
ネコは、普段歩き回っている範囲を縄張りと認識しています。そのため、ネコは行ったことのない場所は落ち着かない、恐い所だと認識します。ただし、品種や個体差があって、好奇心旺盛で新し物好きな子もいれば、見慣れないものを極端に嫌う子もいます。
ネコにとって未知の環境は、恐怖の対象となる反面、まったく変化のない生活でも退屈し、ストレスになります。特に、単独飼育の場合、退屈や運動不足のストレスから、壁や家具を傷つけたり、暴れたり、粗相をしたりと、色々といたずらをするようになります。そこで、複数飼育で互いに遊ばせたり、おもちゃやトリーツを与えたり、お散歩したりして、ストレスを発散させる必要があります。もちろん、理想的なストレス発散は飼い主がたっぷり遊んであげることです。
ネコは走るだけでなく、立体的な運動を好みますから、狭い室内でもキャットタワーなどで高い場所に登れるようにすることで、空間を広く利用することができます。
ネコは一日に16時間以上寝るといわれ、それほど始終動き回る動物ではありません。そこで、子どもの頃から慣らせば、ケージで飼うこともできます。しかし、その場合、毎日たっぷり遊んであげて、トリーツやおもちゃを与え、一人でいるときもストレスを感じさせないようにする配慮が必要です。
基本的に室内飼育のネコに散歩の必要はありません。むしろストレスになってしまうことの方が多いのです。自分の空間を大切にして、そこにいることを幸せとするネコにとって、散歩で受ける様々な音や臭い、人や車などすべてが驚きになってしまうからです。それでも、どうしても連れ出したいときは、自動車や人通りの少ない、なるべく慣れ親しんだコースを選びましょう。一度パニックになって逃げ出してしまうと、自分でもどうしていいかわからなくなって、飼い主が呼んでも帰ってこないで、迷子になってしまいます。散歩のときはハーネスとリードを外れないようにつけ、逃がさないようにしましょう。
屋外生活のネコは木登りをしたり、土を掘ったりしているうち、爪が自然に削られますが、室内のネコは古い爪が剥がれなくて気になるのか、柱や家具などを引っ掻く「爪研ぎ」と呼ばれる行動をします。家具などで爪を研がないように、ネコに爪研ぎをさせる爪研ぎマットが市販されていますが、個体差があって、うまくマットで研いでくれない子もいます。
ネコは爪の鋭い動物なのです。ネコを飼う限り、爪痕が床や家具にある程度付くのは避けられないことです。 |